中川政七商店が問い直す「工芸のしまいかた」。 国際認証「B Corp」取得とともに、ものづくりの循環プログラムを始動
工芸トピックス VOL.47

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株式会社中川政七商店は、社会や環境に配慮した企業に対する国際認証「B Corporation™」(B Corp)を2025年8月に取得した。さらに同社は、工芸を未来につなげるための第一歩として、「工芸のしまいかた」を考える循環プログラムを2026年1月下旬より始動させる。これは、使用されなくなった自社商品を回収・修復・再流通させ、その利益の一部を産地や作り手へ還元することで、ものの“終わらせかた”を見つめ直す取り組みだ。
1716年創業の中川政七商店は、長きにわたりものを「つくる」ことと向き合ってきた。しかし、現代の工芸の現場では、土や漆、染料などの自然素材の枯渇という深刻な課題が進行している。限りある資源を背景に、ものづくりを未来へつなぐためには、「つくる」だけでなく、使い終えたものをどう循環させるか=ものの“終わらせかた”までを見据えた仕組みが不可欠だという認識が、今回のB Corp取得とプログラム始動の根底にある。
B Corp認証は、企業統治、労働者、地域社会、環境、顧客の5つの評価エリアで審査され、中川政七商店は2年以上にわたる審査の結果、厳しい基準をクリアした。特に「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、工芸の「製造・小売」と「産地支援」の両輪で地域社会とともに歩むビジネスモデルそのものや、経営から日々の業務まで全社員が目的を共有している点が高く評価された。
2026年1月に始動する循環プログラムでは、不要となった陶磁器を店頭で回収し、必要に応じて金継ぎなどの修繕を施したうえで、自社店舗にて再販売する。修繕が難しいものについては、粉砕・精製を経て土へと再生し、新たな商品の原料として活用する。再販売による売上の一部は、ものづくりの財源として製造メーカーや工芸産地の団体に還元され、「つくる→つかう→手放す→再びつくる」という循環の実現を目指す。さらに、商品回収の際には、使い手がその商品にまつわる思い出や作り手へのメッセージを任意で記入でき、その想いが再販売時に次の使い手へと受け継がれる仕組みを設けている。
中川政七商店にとって、今回のB Corp認証は、よりよい会社をつくるための出発点であり、工芸の価値を社会に伝え続ける責任を果たすための挑戦だ。伝統を継承しつつ、持続可能な工芸の未来を創造しようとする同社の動きは、これからの工芸の担い手が目指すべき指針となるだろう。
関連情報
株式会社中川政七商店
ウェブサイト:https://www.nakagawa-masashichi.jp/company/