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新潮社が美術・工芸のギャラリー棟「soko」を全館オープン

創業130周年を迎えた新潮社が、東京・神楽坂の自社出版倉庫を改装し、2026年3月27日(金)、美術・工芸のギャラリー棟「soko」をオープンした。1959年に建設され、国の有形文化財にも登録されているこの倉庫は、戦後出版文化の興隆を支えてきた産業遺産でもある。この稀少な出版倉庫建築が、工芸的心性を探求・紹介する同社の「青花」事業の一環として生まれ変わり、その取り組みをさらに発展させていく。

新刊500万冊を収蔵するために建てられた巨大な空間には、書籍の重みに耐えるための武骨な太い梁が無数に走っている。かつてはここから大量の本が全国の書店へと運び出されていたが、都外への物流拠点移転を機に、約30年の間、この倉庫の役割は大幅に縮小されていた。その空間を再生させたのが、新潮社の「青花」事業である。2014年に発足した会員組織「青花の会」を核に、工芸誌『工芸青花』の刊行や展示、講座、骨董フェアなどを展開してきたこの活動は、工芸に美を見出す「工芸的心性」を探る試みとして続けられてきた。2024年には倉庫の一部を改修し、稀代の目利きとして知られる故・坂田和實が蒐集した品々を展示する「坂田室」をはじめ、現代の生活工芸運動と共鳴する企画や展示の場として活用を開始。そして今回、建築家・中村好文の監修により、建物全体が本格的に開かれることとなった。新たにオープンした2階フロアには、「青花」と志を同じくする七つのギャラリーやカフェが入居する。骨董店「神楽坂商店」や現代美術家・村上隆が率いるカイカイキキによる「Kaikai Kiki Gallery M Cubed」をはじめ、古美術、現代工芸、デザインを横断する個性豊かな顔ぶれが揃った。

新潮社が出版事業で長年培ってきた美術・建築・工芸の知見と伝統。sokoは単なる展示空間ではなく、それら「本の中身」を立体化し、美意識や思想、価値観を体験として共有する場へと進化を遂げた。sokoの誕生は、老舗出版社の新たな挑戦であり、出版という営みの拡張でもある。創業130年の節目、工芸に美を見出す「工芸的心性」が、この場所から静かに波及していくことだろう。

 

 

建物概要
施設名:新潮社倉庫soko
住所:東京都新宿区矢来町71
開館:11:00~20:00
休館:毎月第3水曜、年末年始等
※開廊時間、休廊日はギャラリーによって異なります
ウェブサイト:https://www.shinchosha.co.jp/special/soko/

soko 2F
Café Craftern/工藝文化振興会
ARTISTSAN GALLERY
莨室 LiangShi
神楽坂商店
Pâte à chou
1月と7月
Kaikai Kiki Gallery M Cubed

soko 3F
青花室
坂田室

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。