『ロエベ財団 クラフトプライズ 2024』ファイナリストの作品がパリで展示
注目の展覧会・イベント VOL.52
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
東京都
2024.4.17 – 6.30
戸栗美術館
2024.4.18 – 6.16
三井記念美術館
東京都
2024.4.20 – 4.28
八丁堀 陶ギャラリーとべとべくさ
2024.4.26 – 5.9
SPIRAL Market
絵具を調合し、版木に拡げる。その上に和紙を慎重に乗せて、バレンで摺る。息を飲んで見守っていたこの一連の作業の後に、ぱっと版木から剥がされた和紙には、奥行きのある美しい色が乗っていた。
「ただ色を乗せているだけですけど、摺り方の質次第で、遠近感が生まれたり物質感が出たりする。それが一枚の絵の中でぴたりと合うと気持ちいい」と笑うのは、高橋工房で摺師として働く早田憲康さん。美大卒業後、建造物の修復関係の仕事をしていたが、東京ならではの浮世絵版画の歴史に惹かれ、高橋工房の門を叩いた。代表の高橋由貴子さんからの信頼も厚く、会社を代表して海外での実演をこなすこともある。
江戸木版摺には多種多様な技法が存在する。なかでも「ぼかし」技法は特に難しく、ほんの少しの加減が出来を左右するそうだ。根気と集中力が求められる中、「いま、目の前にあることを頑張るだけです」と早田さん。その柔らかい表情が映し出すのは、日々の仕事に誠実に臨む職人の姿だった。