駿河竹千筋細工とソーラーテクノロジーを組み合わせた行燈《Sonnenglas® EN》が発売
新商品情報 VOL.21

展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
東京都
2025.5.7 – 5.12
日本橋三越本店
東京都
2025.5.8 – 5.13
柿傳ギャラリー
東京都
2025.5.9 – 5.18
しぶや黒田陶苑
東京都
2025.5.9 – 5.21
HULS GALLERY TOKYO
愛媛県砥部町は古くからの砥石の産地で、江戸時代に砥石くずを活用した磁器の生産に成功して以来、白磁や染付を中心とした砥部焼が作られてきた。梅山窯は1882年に初代・梅野政五郎が開窯した、砥部で最も老舗の窯元である。政五郎は砥部の渡辺窯から登窯を受け継いでやきものの商いを始め、日本国内はもとより、東南アジアやインドとの貿易により、順調に事業を成長させた。特に和紙を使った型絵染付の茶碗は「伊予ボウル」と呼ばれ、海外からの人気を集めた。戦後は苦境に立たされるものの、四代目当主・梅野武之助は、砥部を訪れた民藝運動の推進者である柳宗悦、濱田庄司、富本憲吉らと出会い、復興への足掛かりを得る。柳らの指導を受け、砥部焼の原点である「手仕事」に立ち返ることを決意した武之助は、江戸末期の手描きの染付磁器を範として、実用的で美しい器の製作に取り組んだ。こうして、梅山窯が今日に至るまで拠り所とし、現在の砥部焼のアイデンティティを形作る「用と美」の精神が確立したのであった。
梅山窯が得意とする代表的な絵付技法に、梅山様式と呼ばれる“つけたての一筆描き”がある。染付や上絵の文様を一息に描いていく一見シンプルな技法だが、シンプルだからこそ、ぶれることなく描くには相当の鍛錬が必要とされる。呉須を用いて迷いなく描かれた深い藍色の美しさを、「職人たちの内面から出てくる、正直でまっすぐな健康美」と、現社長の岩橋和子さんは評する。特にオリジナルの唐草文様は、梅山窯で数々の図案をデザインしてきた故・工藤省治さんが考案したもので、誕生から数十年が経つ現在もその人気は色褪せることがない。副社長の岩橋俊夫さんは、「良いものは時代に関係なく人の心に刺さる」と話す。「同じように描いたものでも、よく見ると違う。これが手描きの味わい。愛着が湧くでしょう」
梅山窯は、2021年にSDGs宣言を策定した。SDGs宣言とは、地域の企業などがSDGsに取り組む意思や行動指針を表明するもので、梅山窯では、砥部焼の伝統を守り、技術の伝承・地域の環境保全などに取り組むことを宣言している。「登窯など貴重な資料を保全し、次世代に伝えていきます。後継者育成も急がないといけません。地域社会のために、持続可能な社会経済、環境保全に向けて貢献したいと思っています」と和子さん。産地で最も歴史ある窯元として、地域を牽引していく責任は大きい。持続可能な地域社会の実現に向け、梅山窯のこれからの取り組みが注目される。