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平戸洸祥団右ヱ門窯

Hirado Kohsyo Danemon Kiln
社名
有限会社 平戸洸祥団右ヱ門窯
地域
長崎県・三川内
住所
〒859-3155 長崎県佐世保市三川内町889番地
代表
第十八代中里太陽
創業者
高麗媼
創業年
1622年
設立年
1986年
従業員数
5名
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ROOTS

平戸洸祥団右ヱ門窯は、三川内焼の窯元が密集する長崎県佐世保市東部、三方を山に囲まれた三川内皿山に位置している。三川内焼開祖の一人、高麗媼(こうらいばば)の直系の後裔にあたる窯元で、江戸時代は平戸藩の御用窯にて、染付や細工をはじめとする高度な加飾技術を用いた磁器を製作してきた。明治になると御用窯は廃止されるものの、のちに十四代中里森三郎さんが現在の窯の前身となる会社を興し、パリ万国博覧会への出品、オランダ王国への献上品の製作などを経て、宮内庁御用達の栄誉に与るなど、国内外で高く評価されるものづくりを続けてきた。その優れた技術は、現代表・十八代中里太陽さんに至るまで脈々と受け継がれ、2015年にはオランダ王国へ再びの三川内焼作品献上が実現した。

高麗媼を祀る釜山神社

宮内庁への献上書

伝統的な三川内焼は、繊細な絵付けや精緻な細工を得意とする。平戸洸祥団右ヱ門窯の場合、佐世保市(2014年)と長崎県(2021年)の無形文化財にも指定されている「平戸菊花飾細工」が最大の特長だ。菊花飾細工は、熟練の職人が竹ベラを用いて粘土から一枚ずつ花弁を切り出して作る。窯に代々受け継がれる技法だが、決して最初からスポットライトが当たっていたわけではないという。「2013年に海外の見本市に出展した時、やっぱり尖ったものが必要だと感じたんです。それを突き詰めていくなかで、海外から見るとこの菊の細工がうちの特長として一番わかりやすいと気づきました。それからは、意図的に菊の細工を見せるようにしています」と中里太陽さんは話す。また、現在販売している磁器の造形や染付の意匠には、平戸洸祥団右ヱ門窯に江戸時代から伝わる図像を発展させたものが多々あるそうで、当時の資料は現在も大切に保存されている。「過去には素晴らしいものがたくさん作られています。絵の手本帳は、先祖たちが積み上げてきた宝の山。多くのヒントがあるので、それをよく勉強して、どう生かしていくかですね。それができるのは、伝統工芸をやっている僕らしかいないと思います。過去をもっと先につないでいく。そういう考え方を大事にしていきたいです」。

絵付の資料

菊花飾細工の盃は人気商品。描く職人の個性が垣間見える蕪の染付も味わい深い

三川内焼の窯元は手作業による絵付けや細工にこだわりを持ち小規模で活動しているところが多く、隣接する波佐見や有田と比べても大きな産地ではない。産地が全体的に縮小傾向にあるのも事実である。だからこそ、窯元はみな三川内焼の認知度向上や作り手・後継者育成の必要性を認識している。平戸洸祥団右ヱ門窯も所属する産地組合では、新たな三川内焼の看板商品として豆皿のプロモーションイベントを行なったり、三川内焼美術館で技術指導を実施したりしてきた。今後は美術館に窯を設置し商品を販売するブースも設けることで、新たな作り手の制作から販売までをトータル的にサポートできる体制を目指しているそうだ。伝統工芸をつないでいくことは簡単ではないかもしれないが、受け継いできた自らの技術に誇りと希望を持つ窯元の未来は、きっと明るいものとなるに違いない。

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