「クラフトマンシップ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.2
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
三川内焼の窯元・平戸洸祥団右ヱ門窯に生まれた中里太陽さん。幼い頃から窯の後継として周囲から期待を寄せられ、自然とやきものの道を進むことを目指していたそうだ。「跡継ぎが生まれると親戚中がお祝いして喜ぶんです。そういう環境だからか、小さい時からこの仕事をしたいという思いはありましたね」。
学生時代は磁器の一大産地である佐賀県有田で窯業を学び、大学を卒業してからはアメリカへ語学留学。その後オランダへ赴き、王立の製陶所にて研修を受けた。家業を継ぐことを見据えた、経験値蓄積のための行動だった。
伝統に固執して的を射ないものを作ってしまうことは避けなければならない。しかし誰かのために一生懸命、とことんこだわって作ったものは、結果として魅力ある商品となり、使い手の共感を得られ、販売にもつながるのだと言う。「この技術を忘れずに作り続けることが、結果的に未来につながるんじゃないかなと思います」と中里さんは笑った。