「クラフトマンシップ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.2
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
日本と韓国の陶芸文化の歴史と伝統の継承について描いたドキュメンタリー映画『ちゃわんやのはなし ―四百年の旅人―』が2024年5月18日(土)よりポレポレ東中野ほか全国で順次公開される。
日本と韓国の陶芸にまつわる歴史は古く、1598年、豊臣秀吉の二度目の朝鮮出兵時に、九州を中心とした西日本の諸大名が各藩に朝鮮人陶工を連れ帰ったことに端を発している。朝鮮半島の進んだ窯業技術を持つ陶工たちは、日本の地で苦難を乗り越え陶芸の技術を磨いてきた。19世紀の万国博覧会出品を契機に“SATSUMA”の名で世界に評価された薩摩焼や、上野焼、萩焼等は朝鮮をルーツに持ち、今もその伝統を受け継いでいる。
映画は、薩摩焼の名跡である沈壽官家の420年以上にわたる歩みを背景に、日本と韓国における陶芸文化の発展と継承の過程を紐解くドキュメンタリー作品。日本人の定義と自身のアイデンティティに悩んだ薩摩焼の十五代沈壽官を救った司馬遼太郎の言葉や、その十五代沈壽官が修行時代を過ごした韓国・利川のキムチ甕工房の家族が語る十五代から学んだ伝統を守る意義、沈壽官家の薩摩焼四百年祭への願い。また、上野焼の十二代渡仁が父から受け継いだ使命、萩焼の十五代坂倉新兵衛が語る父との記憶と次世代への思いなど、朝鮮をルーツに持つ陶工たちと関係者、専門家のインタビューを軸に製作されている。
企画・プロデュースは、今まで国内外で250本以上の映画を手掛けてきた李鳳宇。韓国映画配給の功績を評価され、2008年に韓国釜山映画祭で特別功労賞を受賞した。日本では2007年『フラガール』でインディペンデントの映画会社では初となる日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど、受賞歴多数。監督はフリーランスの助監督として活動し、ドキュメンタリーや短編の監督、長編映画のプロデューサーも務めてきた松倉大夏。本作が長編映画初監督となる。ナレーションは名優・小林薫が務めた。
今も歴史を繋いでいる当事者たちの貴重なインタビューとともに、スクリーンに映し出される薩摩焼の名品、上野焼、萩焼の美しさにも圧倒される。日韓の陶芸文化継承の歴史を通して、未来を見つめることができる作品だ。
◾️関連情報
映画『ちゃわんやのはなし ―四百年の旅人―』
ウェブサイト:https://www.sumomo-inc.com/chawanya
出演:十五代 沈壽官、十五代 坂倉新兵衛、十二代 渡仁 ほか
語り:小林薫
監督:松倉大夏/企画・プロデュース:李鳳宇
撮影:辻智彦、加藤孝信/録音:菅沼緯馳郎、藤田秀成
編集:平野一樹/編集助手:七宝治輝/アニメーション:小川泉/作曲:李東峻
整音:吉方淳二/カラーグレーディング:俵謙太
宣伝美術:李潤希/プロデューサー:長岐真裕
助成:文化庁「ARTS for the future! 2」補助対象事業
特別協賛:株式会社フェドラ、Asia Society Japan Center、大韓航空、財団法人李熙健韓日交流財団
製作年:2023年/製作国:日本/言語:日本語・韓国語/上映時間117分
企画・製作・提供:スモモ
配給:マンシーズエンターテインメント
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