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「小松・加賀(石川県)」

日本の北陸地方に位置する石川県。県庁所在地・金沢は、江戸時代に前田家が治めた加賀藩の城下町として、百万石を超える石高を誇り、今なお「加賀百万石」と称される歴史ある町である。石川県には、加賀友禅、金沢漆器、山中漆器、九谷焼など、多彩な伝統工芸が息づき、その技と美意識は現代へと脈々と受け継がれてきた。

今回ご紹介するのは、石川県の小松・加賀エリア。石川県の空の玄関口である小松空港からのアクセスも良く、海外からの旅にもおすすめの地域だ。本ガイドでは、編集部が実際に訪問した、小松・加賀ならではの文化や工芸に触れられるスポットを紹介する。

からっぽのなかの豊かさ:べにや無何有

開湯1300年を迎えた石川県山代温泉。「べにや無何有」は、その山代温泉の「薬師山」の高台、白山信仰の聖地である薬王院温泉寺の本堂の跡地に静かにたたずむ湯宿であり、古来より僧侶が温泉施浴と薬草の調合により人々を癒してきたという伝統がある。宿名である「無何有(むかゆう)」という言葉は、「からっぽのなかの豊かさ」という意味を持ち、忙しい日常から離れ、静かに自分自身に向き合いたい人にはおすすめの宿だ。2008年からは、一流のホテル・レストランで構成される国際組織である「ルレ・エ・シャトー」に加盟しており、国際的な評価も高い。館内にはダイニング懐石方林、スパ円庭施術院、3つのライブラリーを備え、自然の景色を眺めながら、心と身体を整える特別な時間を提供してくれる。なかでも、温泉と薬草を用いた薬師山トリートメントを行なうスパは特に人気が高く、常連客が絶えない。16室全室に山庭を望む露天風呂が備えられ、いつでも温泉浴を楽しむことができる。山庭で見られるさまざまな苔を鑑賞して楽しむ宿泊客も多いという。2泊以上の宿泊者は、地域の伝統である山中塗りの木地轆轤挽き体験などのワークショップも予約することができる。日本の伝統的な美意識を心ゆくまで体感してみてほしい。

住所:〒922-0242 石川県加賀市山代温泉55-1-3
インスタグラム:https://www.instagram.com/beniyamukayu/
ウェブサイト:https://mukayu.com/

美しい木漏れ日が差し込むロビー

無我の境地:嘸旦ギャラリー

九谷焼の窯元・錦山窯による、石造りのギャラリー「嘸旦(むたん)」。「音のない始まり、そして無我の創造」という意味を持つギャラリーの名に、錦山窯の思想や哲学が凝縮されている。錦山窯は、1906年に創業。金彩の技法を得意とし、三代・吉田美統は「釉裏金彩(ゆうりきんさい)」で人間国宝に認定されている。職人としての誇りを大切にしながら、さらなる高みへと挑戦し続ける姿勢は、ギャラリーの凛とした佇まいにも映し出されている。館内には、窯元代々の作品が展示され、その場での購入も可能。四代目となる吉田幸央は、「金箔を用いた作品は、自然光でこそ最も美しい」と言い、自然光に包まれたギャラリーでの作品たちの美には圧倒される。不定期ながら、さまざまなイベントやワークショップを開催しており、海外からのお客様からの問い合わせにも対応している。

住所:923-0031 石川県小松市高堂町ト18番地
インスタグラム:
https://www.instagram.com/mutan_gallery/
ウェブサイト:
https://mutangallery.com/
https://kinzangama.com/

自然光の入るギャラリー

九谷焼の「今」を知る:九谷セラミック・ラボラトリー(通称:CERABO KUTANI)

小松市にある製土工場、体験工房、作家工房、ショップを兼ね備えた九谷焼制作体験施設。建築家・隈研吾の設計により、2019年にオープン。木を生かした美しいデザインが印象的な平家建ての建物は、いしかわ景観賞を受賞するなど、市の新たなシンボルともなっている。館内には、九谷焼にとって欠かすことのできない地元の磁器土「花坂陶石」の製土工場があり、製造工程を紹介する展示とともに、九谷焼の奥深い世界を多角的に紹介している。併設されている工房では、現役の陶芸家が施設を利用しており、ろくろ体験や絵付け体験の際には、直接指導もしてくれる。本施設は九谷窯元組合によって管理・運営されており、館内のショップでは、組合に参加する窯元や作家の作品も購入が可能だ。館内は30分ほどで見学できるので、お近くにお越しの際は、ぜひ立ち寄ってみていただきたい。

住所:923-0832 石川県小松市若松町ア91番地
インスタグラム:https://www.instagram.com/kutani_ceramic_lab/
ウェブサイト:https://cerabo-kutani.com

木の天井が美しい館内

GATO MIKIO/1

「木地の山中」。その名で知られる石川県加賀市山中地区は、長い歴史の中で木地師の技と美意識が育まれてきた、山中漆器の中核をなす土地である。その地に、山中漆器ブランド「我戸幹男商店」の直営店「GATO MIKIO/1」が2017年にオープンした。店名に冠された「/1」には、「歴史を振り返り、山中温泉の地であらためて1から原点に立ち返る」という意思が込められており、ブランドの精神性を象徴する存在となっている。薄暗く設えられた店内には、代表・我戸正幸の美意識が隅々まで息づき、漆器の輪郭や質感が静かに浮かび上がる。その空間は、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』にも通じる世界観を想起させ、漆という素材が本来もつ奥行きある美しさを味わうことができる。展示されているのは、椀や茶筒、カップ、盆など、「我戸幹男商店」が手がける全ラインアップ。いずれも山中の地で受け継がれてきた伝統的な轆轤(ろくろ)技法を基盤としながら、現代の生活に寄り添う造形へと昇華されたものばかりである。山中を代表する景勝地・鶴仙渓のすぐそばに位置し、木々に囲まれた静かな環境の中で作品を手に取り鑑賞する時間は、訪れる人の心を自然と澄ませてくれる。ものづくりの原点と向き合うための場として、「GATO MIKIO/1」は山中漆器の現在地を静かに示している。

住所:922-0128 石川県加賀市山中温泉 こおろぎ町ニ−3−7
インスタグラム:https://www.instagram.com/gatomikio_shouten/
ウェブサイト:https://www.gatomikio-1.com/

上質な商品が取り揃えられた店内

小松へのアクセス

・東京から小松
東京駅から小松駅まで新幹線で約3時間
羽田空港から小松空港まで約1時間

・大阪から小松
大阪駅から小松駅まで特急・新幹線で約2時間15分

・金沢から小松
金沢駅から小松駅まで新幹線で約12分(在来線で約30分)
金沢西ICから小松ICまで車で約40分

 

加賀へのアクセス

・東京から加賀
東京駅から加賀温泉駅まで新幹線で約3時間
羽田空港から小松空港まで約1時間、小松空港から加賀温泉駅まで車で約20分

・大阪から加賀
大阪駅から加賀温泉駅まで特急・新幹線で約2時間10分

・金沢から加賀
金沢駅から加賀温泉駅まで新幹線で約18分(在来線で約45分)
金沢西ICから加賀ICまで車で約50分

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。