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白花花器

陶芸
工芸作家
森本 仁
産地
岡山県・備前
サイズ
Φ115 × H235 mm
素材
陶土

静寂の美

ずっと手で触れていたくなるような、しっとりと滑らかな器肌から、ところどころ見え隠れする小粒の石。丁寧な面取りが生む陰影が、彫刻作品のような形状をより一層際立たせている。その現代的な趣に、これも備前焼かと驚く人も多いだろうか。

「白花(しらはな)」は、備前の土の質感そのものを見せようと、作家が焼き締めの実験を繰り返す中で生まれた独自の表現。伝統的な備前焼と同様、周囲の田土を成形し釉薬を用いず焼成しているが、登窯ではなく灯油窯を使うことで、灰が掛からず焼き跡も抑えられ、端正な表情に仕上がっている。白く焼き締まった土肌を表す白花という作品名は、日本の伝統色である白花色から名付けたという。

力強い炎の痕跡に魅力を見出す備前焼とはまた異なる、備前の土の純粋な美しさ。周囲の光や音を穏やかに吸い込むような佇まいは、現代の忙しない日々に心地良い静けさをもたらしてくれるだろう。

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