『FUTURE PERFECT 工芸を通じて翻訳される豊かさのかたち』開催
注目の展覧会・イベント VOL.72

展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
2025.10.3 – 11.16
大分市美術館
2025.10.4 – 11.16
遊朴館 HIDA GALLERY
岐阜県
2025.10.4 – 11.29
岐阜現代美術館
2025.10.4 – 12.7
佐賀県立九州陶磁文化館
ゆるやかに立ち上る霧の中、朝日を受けて輝く薬師寺。奈良を象徴する景色を映し出す茶碗は、赤膚焼の窯元、香柏窯で作陶を行なう尾西宏紀による作品だ。奈良を代表するやきものである赤膚焼は古い歴史を持ち、当地の寺社にも多くの作品が納められている。
艶のある釉薬の上からも土感を感じる手触りと、しっとりとした風合いの高台を持つ茶碗は、国宝の薬師寺東塔の修繕の際に、基礎部分より掘り出された創建時の土を譲り受けて作られた。鉄分が多く焼成は困難であったが、試行錯誤の上、基壇土のみを陶土として使用。焼成によって茶碗の見込みに現れた釉薬の変化を朝霧に見立て、その中に立つ薬師寺の姿が金彩で丁寧に描かれている。かつての都、平城京最古の建造物であり1300年の時の流れを汲む薬師寺の化身のように、その佇まいは揺るぎなく、力強い。