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『VOICE × 九谷茶譚 Special collaboration』展覧会レポート

2021年6月19日(土)〜27日(日)、外苑前の花屋「VOICE」にて、九谷焼の窯元 錦山窯の最新作「九谷茶譚」の展覧会が開催されました。

石川県小松市に位置する錦山窯は、九谷焼の絵付を専門とする窯元です。110年余りの歴史があり、伝統的な色絵や金彩の技法を活かした作品を制作しています。この度、都会の裏路地に佇む小さな花屋で、色とりどりの花と華麗な器たちの競演が始まりました。

九谷茶譚「一茶 – issa -」

九谷茶譚は、本年新たに発表された茶器のシリーズで、絵巻物のようなストーリー性のある絵付けが魅力です。日本茶用、中国茶用、一人用の3種が展開されており、それぞれ急須や菓子器、湯呑、茶壺、蓋碗などがぴったりと重なる構造となっています。様々な使い方が可能な茶器ですが、なんと花入としても使用できるそう。そんな九谷茶譚の誕生のきっかけは、錦山窯の工房から古い絵付け用の陶印が発見されたことでした。その陶印に描かれていたのは、老爺と唐子がお茶を淹れている姿。「一滴のお茶から芳しい香りが金色の輝きとなって溢れ、老爺と唐子は至福の喜びに包まれます。それがたくさんの鳥たちによって人々に伝わり、彼らは究極の茶葉を探す旅に出る。この陶印を見つけたとき、そんなインスピレーションが湧き出てきました」と語るのは、錦山窯4代目当主、吉田幸央さんの妻である吉田るみこさん。自身も作家として作陶活動を行ないながら窯の運営に携わる敏腕陶芸家です。九谷茶譚の絵柄が表現する物語についてお話しする姿はとても印象的で、作品への深い想いが感じられました。

お茶を淹れる老爺と唐子

鮮やかな色彩の作品群

釉裏金彩を用いた装飾

九谷茶譚には、錦山窯が得意とする「釉裏金彩」の技法が使われています。釉裏金彩とは、器の表面に金箔で紋様を表し、その上に釉薬を掛けて焼き上げる技術のこと。今回のシリーズではさらに改良が重ねられ、釉薬の艶と金彩のマットな質感が混在した、奥行きある新たな表現が生まれていました。

伝統技法やいにしえの図案を活かしながら、その表現は常に新鮮で美しい。錦山窯は、歴史ある九谷焼の窯元として、工芸の一つの在り方を示してくれているように思います。

文:堤 杏子

■ 関連情報

・VOICE
http://voice-flower.jp/
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-11 JINGUMAE HOUSE 1F
TEL: 03-6883-4227

・「九谷茶譚 -KUTANICHATAN- 」 special collaboration vol.3 – VOICE –

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。