Insightインサイト

展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。

展覧会情報

展覧会一覧へ

『佃眞吾 木工芸展』展覧会レポート

2024年2月21日(水)~26日(月)の期間、神奈川県横浜市西区にある横浜高島屋美術画廊にて、木工芸作家・佃眞吾(つくだ・しんご)さんによる作品展が開催された。さまざまなギャラリーで展覧会を行なっている佃さんは、日本橋高島屋と横浜高島屋ではほぼ隔年で展覧会を開催しており、今回は3回目の個展だという。佃さんは滋賀県長浜市生まれで、家具職人の修行の後、故黒田乾吉の木工塾に学び、京指物工房の職人修行についた。その後、国展国画賞などの賞に輝き、興福寺中金堂落慶法要の献茶道具の制作にも携わっている。本展では、最新作を含む130点程度を展覧した。

落ち着いた雰囲気の画廊に、精緻で繊細な作品が並ぶ

作品はいずれも杢目が際立って美しい。海の波や砂丘を思わせるものもある

佃さんの作品は端正で雅趣に富み、とりわけ杢目が際立って美しい。「材料にはこだわっていて、買い集めるのが趣味。誰も使っていないような木を使いたい」という佃さんは、材料や杢目を見ている時にインスピレーションが湧くそうだ。漆を使う際は、杢目の個性を残すために精製度の高い黒目漆を使い、塗っては拭き取る作業を繰り返して漆の膜を極力薄くしているとのことである。

佃さんは木という材料を自在に使いこなしつつ、木の多様な魅力を示そうと試みる。例えば《黄肌木画小箪笥(キハダ)》は、引き出しの正面部分は黒柿、引き出しの縁の部分は柘植、箪笥全体の縁の部分は椿を使っている。この作品は、正面から見ると、まるで水墨画のような黒柿の模様が目を惹き、上から見ると、精緻な図形と文様が幾何学的で硬質な印象を与える。一方、黒や薄茶の木を組み合わせた《木画小箪笥(神代欅・榧)》は、木の色味と照りが相まって遠近感が生じ、まるで騙し絵のような効果を生んでいる。

新作の蓋物は、木材を削り出す刳物ではなく、木を合わせて組み立てる指物でつくっているとのこと。八枚の板を組み合わせた《八稜合子(塩路)》は緻密な杢目が繋がっており、蓋の部分も理想の形になるように極めて微細に削られている。ほか、厚みや杢目を揃えた《四稜合子(欅)》など、技巧が堪能できる逸品揃いだ。

八枚の板を組み合わせた《八稜合子(塩路)》
細部に至るまで杢目の繋がりがコントロールされている

オリエンタルな雰囲気が漂う花器はシンプルな形で、どこにでも馴染む佇まいである

なかには、アフリカの木を使ったトレイや、ヨーロッパの上流階級などで使用されたサルヴァ(銀盆)の形をモチーフにしたトレイもある。また、古代ギリシャ・ローマ時代の銅器からアイディアを得た花器など、時代や国籍を超えた風情を漂わせるものも見受けられた。佃さんの作品がさまざまなインテリアやシチュエーションに馴染むのは、多様な文化からアイディアを得ているためかもしれない。

佃さんは「陶芸の場合、作品をいったん窯に預けるが、木工の場合、木という材料が作家の手を離れずに最後までつきまとうので、どういう木を使うのかが重要になってくる」と語る。木に知悉し、杢目の美しさを引き出すためにこの上なく高い技術力を磨き続ける佃さんの作品は、一つ一つが木々の豊かな生を物語っているようだった。

文:中野 昭子

■ 関連情報

横浜高島屋 7階 美術画廊
https://www.takashimaya.co.jp/yokohama/topics/art.html
〒220-8601 横浜市西区南幸1丁目6番31号
TEL: 045-311-5111(代表)
営業時間:10:00~20:00

SHARE WITH

KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。