「クラフトマンシップ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.2
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
ギャラリーの広い空間を見渡すと、とりわけ花器が目を惹いた。それはおそらく、土の繊細な質感や複雑な色味が、植物の生命力を魅力的に見せていたからだろう。器のシンプルでおおらかな雰囲気は、活けた花を品良く引き立たせながら、どんな場にも馴染むように感じられた。
中里さんの陶芸は、素朴さや渋さを残しながら、曲線や全体のバランスが美しく、伸びやかで瑞々しい。自由で新しい感性は、中里さんが文化服装学院を卒業し、学生時代はオーダースーツを制作する科に在籍していたことに関係するように思う。
中里さんは、さまざまなものをインプットして考える習慣や、技術を磨くことの大切さといったものづくりの基礎は、ファッションとやきもので共通していると語る。また、アフリカのアンティークや、ポール・ケアホルムやハンス・J・ウェグナー、ハリー・ベルトイアらがデザインした家具なども好きとのことだ。作品が和洋を問わずどんな場所でも馴染むのは、自身が柔軟で広い視野を持っていることに由来するのだろう。
朝鮮半島の陶工たちの力もあって発展を遂げた唐津焼は、日本で初めて顔料で絵付けを施したやきものとされ、変化を受け入れ挑戦を重ねてきた歴史がある。中里さんに唐津焼の魅力を尋ねたところ、やきものに漂う寛容さや、勢いはあるが軽妙でもある部分だと語った。作陶には、ろくろや絵付け、釉掛けといったさまざまな段階があるが、いずれも一回勝負とし、手を入れるのは必要最小限にしているそうだ。