インタビュー:陶芸家・加藤亮太郎
VOICE VOL.7
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
まるで無数の小花が連なっているような、繊細な模様。
竹という素材の可能性を最大限に活かした小倉智恵美の竹工芸は、大聖堂のモザイク画を思わせる幾何学的な美しさと、竹の持つ柔らかな雰囲気が合わさり、あたかも小宇宙のように緻密で奥深い魅力がある。作品からにじむ柔和で真摯な人柄を感じながら、ものづくりへの思いを伺った。
インタビュアー / 中野 昭子
京都府在住の竹工芸作家。繊細な編組が特徴。伝統的な編み模様や装飾技法の美しさを最大限に活かしながら、日本の自然に寄り添う作品作りを続けている。
詳細プロフィールへおそらくデザインと技巧は別のところから発生しているものではないと思います。デザインに関しましては、今の生活の中で使っていただきたいので、例えばアクセサリーの場合は体に調和するデザインを考えていますし、フォルムにおいては純粋な美として考えることもあります。
一方で、竹工芸の特徴として、伝統的な編みによって成立する構造物であり模様である、という面があります。編み模様は考え尽くされたもので、編みの技術で作られた器物は実用に耐えるものとして成立しています。加えて(編み模様は)それ自体が完成されて美しいため、編みを使った作品は、実用面でも美的な面でも優れたものになります。
私は、「編み模様のポテンシャル」をどれだけ生かせるかを大切にしております。例えば3種類の太さの異なる竹ひごを編み合わせる時、0.1ミリ単位で幅を変えるだけで見え方が全く異なってきますし、一つの円の中にいくつのパターンが入るかでも印象が変わります。どうすれば模様が一番美しく見えるかを常に追求しながらデザインを考えていますね。
目指していることは、大きく三つあります。
まず美しさを追求し、竹工芸の伝統的な編み模様が持っている力を活かしてより良い作品を生み出していきたいと思っています。
二つ目は、生活と乖離したところで制作していくのは私の思うところではなくて、使うことで生活の中で安らぎを得ていただける、長く愛でてもらえるような品物を作りたいということです。そのなかで新しい作品を手掛けていきたいです。
三つ目は伝統文化に関することです。私はもともとお茶の世界に惹かれてこの世界に入り、今も茶道を続けています。茶道や華道など、たくさんの日本人が育ててきた文化の伝承に、微力ながら一助となることができたらいいなと思っています。お茶やお花で使われる籠などの制作も大切にしつつ、ニーズを鑑みながら新しいものを作り、文化として繋ぎながら活動していきたいですね。