『工芸シンポジウム「伝統と未来を考える」〜今、求められる革新とは〜』開催
注目の展覧会・イベント VOL.57
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
2024.9.10 – 11.4
静嘉堂文庫美術館
2024.9.13 – 9.28
HULS GALLERY TOKYO
2024.9.14 – 9.19
寺田美術
東京都
2024.9.14 – 9.22
会津屋
1775年に有田の地で創業した藤巻製陶は、美しい青白磁で知られる窯元である。青白磁とは、白磁に水色がかった透明感のある釉薬のことで、その起源は11世紀の中国・景徳鎮に遡る。江戸時代より、鍋島藩の定める17窯場の一つとして染付皿や鉢類などを生産してきた同社は、九代目の藤本覚司さんの代になって、青白磁の生産を始めた。その背景にあったのは、高度経済成長期の絵付師の人材不足だった。覚司さんは産地内での差別化を図るため、日本での作り手が少なく、珍しい技法の一つであった青白磁の開発に着手した。以来、絵付けが一般的なこの地で、藤巻製陶は、白磁や青白磁、結晶釉などを駆使して、絵を施さない清涼感のある磁器を制作している。
白地に釉薬の「溜まり」を設けることで色の濃淡を作り出す青白磁の器は、その爽やかな色合いから、夏の時期の料亭で人気の存在となった。ガラスのような透明感のある青は、見る人の心を惹き付けてやまない。青白磁は、通常の釉薬よりもガラス質が厚いため、焼き上がりに凹凸が生じないよう、生地の段階から釉薬の溜まり部分を薄く成型しなければならない。また、釉薬の厚みが増すと割れやすくもなるため、高い技術が求められる。
青白磁の開発によって培ってきた独自の釉薬技術と、淡い発色が活きる個性的な器の形に、藤巻製陶の磁器制作へのこだわりが見て取れる。覚司さんに続く10代目の藤本浩輔さんは、その技術を生かし、現代のライフスタイルに合うモダンな有田焼ブランド「1616/」の制作も手掛けている。国内外のデザイナーとのコラボレーションをしながら、「自分は技術屋」と語る浩輔さんは、どんな難しい要求にも挑戦する姿勢を貫いている。絵付けをしない窯元だからこそ、藤巻製陶は形と釉薬に磨きをかけて、他にはない表現を追求し続けている。