『谷穹 抽象と静寂』展覧会レポート
展覧会・イベントレポート VOL.30
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
東京都
2024.11.27 – 12.9
日本橋髙島屋
2024.11.28 – 12.8
セイコーハウスホール
東京都
2024.11.30 – 2025.2.2
松濤美術館
岐阜県
2024.11.30 – 2025.3.16
岐阜県現代陶芸美術館
能登半島北部に位置する輪島市。この地域で生産される輪島塗は、「地の粉」と呼ばれる地域特有の珪藻土を混ぜた漆を使う。その漆を塗り重ねた下地に、純度の高い漆を幾十にも重ねる伝統的な製法で造られており、堅牢さと沈金や蒔絵による優美な装飾で知られている。1888年に創業した藤八屋は、地域の職人を統括し、輪島塗の製造販売を行う塗師屋だ。創業当時は全国各地へ行商していたが、現在の「親方」である塩士正英さんの父の代から、業務用漆器のオーダーメイドに力を入れてきた。
正英さんは、伝統的な技法を用いながらも、業務用として耐え得る、丈夫さと使いやすさを追い求めてきた。飲食店の現場の声を聞きながら、形状、色合い、堅牢度、いずれの面からも幾度もの試作を重ねてきたという。塗師としてのこだわりは強く、藤八屋が手がける漆器はすべて、最後の仕上げを、必ず正英さんが行なっている。
120以上の工程を重ねる輪島塗の伝統製法を守りながら、顧客の要望に寄り添うものづくりへの信頼は厚く、得意先にはミシュラン星つきの一流店が名を連ねる。また本店では、普段づかいの漆器やアクセサリーなども販売しており、これらの商品を企画する正英さんの妻の純永さんは、輪島の漆器の良さを伝え、日常使いしてもらうための活動に尽力してきた。輪島塗の発展を願い、海外販路開拓という新たなステージも目指している。
※この記事は、2019年に作成されたものです。令和6年(2024年)能登半島地震で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。