「もののあはれ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』 VOL.12
兵庫県・丹波篠山に構えた工房で制作を行なうガラス作家、関野ゆうこ。デザインや形状の隅々にまで細やかに気を配り、使う人の生活空間や暮らしに寄り添う作品を洗練された美的感覚で作り続けている。
以前から憧れていたという青磁、その青色をガラスで表現したいと、探究の末にたどり着いた作品が「蒼のうたかた」だ。鮮やかな青色は、ガラスの表面に銅箔を巻き付けることで作られている。ガラスの上で重なり合った銅箔から意図せず生まれる黒色や色の濃淡、流れる紋様が、独自の吹きガラスの技法による泡立つようなガラスの表情と合わさり、奥深い世界を見せている。
青く輝く球形の蓋物は、まるで空から眺める地球を写したかのようだ。作為が及ばないガラスの変化を巧みな技術によって研ぎ澄まされた形に留めた作品は、その名の通り、儚く美しい魅力を湛えている。
