「クラフトマンシップ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.2
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
《刻硝瑞環 壺》は、透明なガラスに被せた白いガラスを手で削って模様を描き、さらに透明なガラスを上に巻いて吹きガラスの技で成形した作品。最後に白い部分を磨りガラスにすることで、透明なガラスの線から光が漏れ差すような、洗練された印象に仕上がっている。
作品が表すのは「命の源」。枝分かれの模様は空に閃く雷光や地上を流れる川、生物の血管や神経など、命にまつわるレリーフをかたどっており、生命の存在には欠かせない光をその身に湛える姿は、地球上のあらゆる生、まさに森羅万象を体現している。ガラスという、光を透過し内包もする、光とは切り離せない素材の特性が可能にした表現だ。国内外の工房で磨いた高度な技術によって生み出された作品には、作家が日本人のアイデンティティとして意識している研ぎ澄まされた美的感覚が投影されている。