「クラフトマンシップ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.2
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赤土の色が透ける口縁から、繊細な禾目模様に沿って次第に紫、青と釉の色が鮮やかになり、高台脇にはたっぷりとターコイズブルーの釉が留まる。一碗の中に込められた色調の移ろいは涼やかな清流のようであり、あるいは四季の変遷のようでもある。見込みの湖のような釉溜まりも美しい。爽やかで品のある、それでいてどこか温かみも感じさせる茶碗だ。
本作《翠彩天目茶碗》は、1719年に会津本郷焼の産地に開窯した宗像窯の後継として日々研鑽を積む陶芸家、宗像利訓の手によるもの。地元の白鳳山で採れる的場陶土が、この質感の肝となっている。さらに2種類の釉薬を重ね掛けして焼成することで、複雑な色彩のグラデーションが表現されている。
会津の自然の美しさが投影された作品からは、宗像氏の作陶の核にある、生まれ育った会津への愛情を窺い知ることができるだろう。