「クラフトマンシップ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.2
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
桃山時代、茶の湯の隆盛とともに発展した伊賀焼。この時代の伊賀焼は一般に「古伊賀」と呼ばれ、個性的な意匠や、力強い「破調の美」が特徴とされる。
谷本貴は、伊賀の伝統に正面から向き合うと同時に、自身の創造性を大胆に織り交ぜながら作陶に励む陶芸家だ。自然な土の動きを意識した、無作為の作為ともいうべき際立つ造形がこの作家の真骨頂。一見して奇抜にも見える作品は、現代的な美を体現する一方で、作品を見つめていると、その下地には古伊賀への敬意と熱心な研究が積み重なっていることがわかる。
本作を制作するにあたり、造形、焼成の各段階においていくつかの新たな技法に挑戦した谷本氏。伝統を基盤としながらも更なる発展を誓う、自らへの発奮を促す意味も込められているという。そうしてできた作品の唯一無二の創造性は、我々の目を捉えて離さない。