Insightインサイト

展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。

展覧会情報

展覧会一覧へ

伊賀茶碗

陶芸
工芸作家
辻󠄀村 塊
産地
奈良県・桜井市
サイズ
W155 × H74 × D122mm
素材
陶土

緋色に舞う

奈良県桜井市、自然豊かな山中に工房を構える辻󠄀村塊。自ら築いた窯で薪を焚き、実直に作陶と向き合うその日々が、作品に宿る圧倒的な力の源泉である。

本作《伊賀茶碗》は、火と土との対話を積み重ねる中で磨かれた、作家の瑞々しい感性に満ちている。意図的に歪められた沓形の造形は、器としての均衡を保ちながら、山間を吹き抜ける風のような自由さを湛え、遊び心に満ちた独特の存在感を放つ。数日間に及ぶ熾烈な焼成を経て、器には鮮やかな緑のビードロが滴り、夕闇に染まる山肌を思わせる緋色が地肌を深く彩る。

特筆すべきは、その赤々とした土に露出した無数の白い長石だ。それは、薪から弾け飛んだ火の粉がそのまま土に焼き付いたかのような、鮮烈な生の躍動を感じさせる。自身が本当に「良い」と思えるものを作る、その純粋な作陶への対峙が生んだ確かな生命力が、この一碗に凝縮されている。

SHARE WITH