「現代のリトリート」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.5

VOL.1-5
更新
VOL.1-88
更新
VOL.1-54
更新
VOL.1-29
更新
VOL.1
更新
VOL.1-8
更新
VOL.1-31
更新
VOL.1-4
更新
VOL.1
更新
VOL.1-32
更新
VOL.1-3
更新
VOL.1-12
更新
VOL.1
更新
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
2026.5.23 – 5.29
寺田美術
東京都
2026.5.23 – 5.31
代官山ギャラリー
東京都
2026.5.30 – 6.7
うつわや 涼一石
2026.5.30 – 6.28
緑ヶ丘美術館
緻密な技が手繰り寄せたのは、古の記憶を宿す、静謐で無垢な佇まい。信楽の陶芸家・谷穹が手掛けた《信楽 蹲》は、中世の古信楽が備えていた、飾らぬ美学を現代に提示する。
蹲った人の姿に似ていることからその名が付いたとされる「蹲」。重心を低く置き、肩の張った安定感のある造形に、特徴的な二重口の意匠がアクセントを添える。穴窯の炎に晒された無釉の土肌は、褐色から焦茶、灰色、黒などの色彩が複雑に重なり合う、まるで大地の層のような景色を描き出す。そこには白い長石の粒が星屑のごとく表出し、その対比に惹きつけられた鑑賞者の視線は、自ずと作品全体を巡る。
やきものに宿る、作者の美意識。谷の作陶とは、先人が遺した美を紐解き、あくなき技術の探求を通じて、その哲学を現代に再構築することに他ならない。本作と対峙すれば、数世紀の時を超えて立ち現れる中世の気配が、静かに空間を包み込んでいく。