「日本のラグジュアリー」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.4

展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
山梨県
2025.11.18 – 2026.2.1
山梨県立美術館
東京都
2025.11.28 – 12.7
しぶや黒田陶苑
東京都
2025.12.2 – 12.7
八雲茶寮
2025.12.9 – 2026.3.1
国立工芸館
濁りのない、澄み切った白。この作品が備前焼と聞いて驚く人は多いのではないだろうか。備前と聞いて思い浮かぶ像を鮮やかに裏切る本作は、陶芸家・藤田祥が近年取り組んでいる「白備前」の茶碗である。
炎による多様な窯変が見どころの備前焼だが、白備前も江戸時代から作られていたことがわかっている。現存する古い作品は希少かつ、現代の作品も作家により白の風合いはさまざまだ。藤田氏は、備前市三石の地下深くから採掘された純度の高い陶石のみを薪窯で無釉で焼き締め、ほかに類を見ない白く眩い景色を作り出した。切り立つ雪の山脈のように鋭く削り取られた形状は、白い土の潔い魅力を一層高めている。
備前の土が最も美しく見える表現の追求に妥協はない。土の限りない可能性と作家の創造性が出会った時、既存の概念を超えた作品が生まれるのだろう。