「クラフトマンシップ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.2
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一千年以上もの長い歴史を有する焼き物の地、備前。窯で焼き締める度に毎回違う表情を見せる備前の土は、今も新鮮な驚きを与えてくれる。
その備前で自身の陶芸の道を歩む作家、馬場隆志の茶碗は、一目で氏の作品とわかる個性を放ち、凄みさえ感じさせる。口縁から流れる漆黒の艶は、伊部手という塗り土を施す備前の伝統技法を研究したどり着いた表現。高台から立ち上る鮮烈な青い筋は独自の土の調合から生まれた。登窯の中で起こる窯変は予測がつかないものだが、土にこだわり、炎と対峙する作家のあくなき挑戦が、無釉とは思えぬ色鮮やかな作品を作り出している。
彫刻的な造形を得意とする作家が本作で形作ったすんなりと自然な丸みは、色の大胆さを存分に引き立たせている。先人が積み重ねてきた技術を踏襲しながら新しい表現を目指す、作家の生き様が投影されたような茶碗だ。