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『山口真人 個展』展覧会レポート

2021年4月3日(土)〜8日(木)、銀座 黒田陶苑アネックスにて、瀬戸の陶芸家 山口真人さんの個展が開催されました。

山口さんは、愛知県瀬戸市を拠点に、織部や志野、黄瀬戸をはじめとする作品を制作している陶芸家です。中でも織部作品は、山口さんの現代的な感性が色濃く反映されており、斬新で華やかな美を感じさせるものが多くあります。毎年恒例となっている今回の黒田陶苑での個展にも多くのファンが訪れ、早々にご約定済となる作品が続出しました。

織部花入

山口さんを象徴する作品は、なんといっても「琳派織部」シリーズでしょう。琳派織部とは、伝統の織部に琳派などの日本古来の伝統的な図案をさまざまに組み合わせ、絵文様や貼付文様にして装飾する、山口さん独自の表現技法です。見る角度によっても印象が変わるため、360度どこから眺めても楽しめます。細かな絵付けや貼り付けなどの複雑な工程を経て完成するこのシリーズは、膨大な手間と時間がかかるため「制作が大変です」と笑う山口さん。モチーフは「龍」や「鳳凰」をはじめ、最近では「鳥獣戯画」、今回は新たに「不動明王」や「毘沙門天」、「曼荼羅」などもお披露目となりました。作品のアイデアを生む秘訣が気になって尋ねてみると、「かっこいいものを作りたくて。感覚なんです」と戸惑いつつも、山口さんがこれまでに訪れた国内外の様々な土地、そこにある建築意匠、ご自身も好きだという戦国武将に関連するモチーフなどがヒントになっていると教えてくださいました。

琳派織部のほかにも、山口さんの代表的な表現のひとつである鮮やかなグラデーションの織部作品、黄瀬戸や志野など、多数の作品が展示された本展。今回はさらに信楽や銀彩の作品も展開され、特に食器が充実している印象でした。確かな技術のもと常に感性を磨き、好奇心旺盛に創作活動に取り組む山口さんの表現に惹きつけられる人は、これからも確実に増えていくに違いありません。

文:堤杏子

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。