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『高橋奈己 作品展』展覧会レポート

2021年6月19日(土)〜25日(金)、南青山 寺田美術にて、陶芸家 高橋奈己さんの個展が開催されました。本展では、彼女の代表的な作品である真っ白な白磁のほか、新たにパール釉やプラチナ釉の作品も登場。茶器や酒器に始まり、食器や花器、線香立てまで、さまざまな作品が訪れる人を出迎えます。大きな窓いっぱいに自然光が差し込む空間に、凛とした作品が立ち並ぶ光景は、思わず見惚れてしまうほど。「寺田美術さんでは自然光の中で展示ができるので、光と陰影が活きるような展示を意識して作品を制作しました」と高橋さん。まさに、作品と光が融け合う極上の展示となっていました。

柔らかな光の中での展示

国内外で陶芸を学ばれた高橋さんは、植物の実や種にインスピレーションを得た「自然の造形美」を、自らの作品を通して表現されています。陶芸の成形技法には、ろくろや手びねりなど様々な方法がありますが、高橋さんが用いているのは、型を使って成形する「鋳込」の手法です。型ならではの自由な造形と曲面に彫られた緩やかな稜線、その有機的な相関性の中で生まれる立体感と光の陰影。それらが一見不揃いながらも絶妙なバランスで一つの作品を構成する様は、見事の一言に尽きます。磁土の白さと質感は光との相性が良く、造形と陰影の美しさをより一層際立たせます。その意味では、パール釉やプラチナ釉の作品は高橋さんにとって新たな挑戦でしたが、パール釉は柔らかく、プラチナ釉は力強く光を映し出し、これまでの作品とはまた異なる魅力を見出させてくれました。作品の素材、造形、質感すべてが、高橋さんならではの独自性を形作っていると言えるでしょう。

床の間と茶道具

今回出展された花入には、華道家の上野雄次さんが花を生けてくださったそうです。高橋さんの花入の造形を活かしながら、花自身の美しさもしっかりと引き立つ挿花は素晴らしく、クレマチスの瑞々しい色合いが、展示に鮮やかなアクセントを加えていました。本展の気品ある洗練された空間の中で、訪れた人々は存分に展示を楽しまれたようでした。

文:堤 杏子

■ 関連リンク

・高橋奈己 プロフィール
https://www.kogeistandard.com/jp/artist/nami-takahashi/

・南青山 寺田美術
http://teradabijyutsu.jp/
〒107-0062 東京都港区南青山6-6-22 TRD南青山3階
TEL: 03-6427-6522
常設営業時間 火曜~土曜 13:00~19:00
個展営業時間 12:00~19:00
定休日 日・月・祝
※展示会開催時は変更

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。