本展のメインビジュアルにもなっていた《信楽 茶碗》は、「引き出したとき、すぐに『今回のDMの表紙にしよう』と思いました」というほどの自信作。しっかり焼き締まった質感と自然釉の流れが美しい、見どころの多い作品だ。焼締は、薪窯焼成による作品それぞれの個性豊かな表情が魅力。たくさんの作品の中からお気に入りを見つける楽しみを与えてくれる。食器も充実していて、青磁のぐい呑には焼締に勝るとも劣らない幅広い表現が見られた。使用する土の種類の違いによって、色調が大きく変わってくるのだという。それぞれ印象の異なる青磁を比べて鑑賞するのも一興だ。育て甲斐のある器として人気の粉引は、搔き落としで漢詩が刻まれた徳利が目を引いた。記されていたのは、李白の『月下独酌』。なんとも粋な作品である。