『谷穹 抽象と静寂』展覧会レポート
展覧会・イベントレポート VOL.30
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
東京都
2024.11.27 – 12.9
日本橋髙島屋
2024.11.28 – 12.8
セイコーハウスホール
東京都
2024.11.30 – 2025.2.2
松濤美術館
岐阜県
2024.11.30 – 2025.3.16
岐阜県現代陶芸美術館
先染めの織物である小倉織では、繊細なグラデーションを表現するため、さまざまな色彩の糸を準備しておく必要がある。築城さんは通常、何百種類という色を細かに染め分けているという。トークイベントで聞き手役を務めた、日本デザインコミッティー事務局長・土田真理子さんの「最も好きな色は何色ですか」という質問には、「一番高貴な色である紫は、やはり憧れの色です。なかなか染まりにくくて貴重な色。別格ですね。その他だと、緑が好きです。緑は一度では染められない色で、まず藍に染めて、そこに槐(えんじゅ)などの黄色を入れていきます。不思議ですよね。緑は自然界にこんなに溢れている色なのに。『目にしていることと真(まこと)のことは、別にある』と教えられていると言いましょうか、広がりがあって、奥深い色だと思います」と話した。
デザインギャラリー1953は、世界中のさまざまなジャンルのデザインを紹介する目的で、1964年に開設されたギャラリーだ。「これまでの築城則子の個展では、小倉織は帯などの作品として“呉服”という観点から鑑賞され、評価される機会がほとんどでした。しかし今回の展覧会は、展示企画・構成を世界的テキスタイルデザイナーの須藤玲子さんが担当し、小倉織を“デザイン”という観点から紹介しています。これはとても画期的なことです」。そう語るのは、築城則子さんがデザインを監修する小倉織ブランド「小倉 縞縞」の築城弥央さん。小倉織は、築城則子さんと彼女に共感する多くの人たちの尽力により、いまや手織だけでなく機械織での生産を拡大し、世界にそのデザインの美しさを発信している。「今回のような小倉織のインスタレーションを、海外の会場でも積極的に展示していきたい」と築城弥央さんは意欲を見せる。
トークイベントの後、再度展示を鑑賞してみた。すると、築城則子さんの自然界の色への慈しみが、全ての縞の根底に流れていることに気づく。「自然界の音を聴き、頭に浮かんだ音楽を縞に落とし込むようにデザインしている」との言葉通り、一つひとつの色が、縞の中でハーモニーを奏でるように生き生きしている。築城則子さんは今、「たて縞をより活かすために、斜めの線を入れる試みを行なっている」という。まだまだ試行錯誤中で、高い完成度が要求される試みだそうだ。来年、小倉織は再生40周年を迎える。紡がれる新たな一ページを楽しみに待ちたい。
『The rebirth of Kokura Ori 縞の美・縞の粋 ― ひとひらの裂(きれ)から小倉織の再生』は2023年2月20日(月)まで開催中。
文:堤 杏子
■ 『The rebirth of Kokura Ori 縞の美・縞の粋 ― ひとひらの裂(きれ)から小倉織の再生』
会期:2022年12月27日(火)〜2023年2月20日(月) 10:00〜20:00(最終日17:00閉場)・入場無料
会場:松屋銀座7階・デザインギャラリー1953(東京都中央区銀座3-6-1)
ウェブサイト:https://designcommittee.jp/