「クラフトマンシップ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.2
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蒲地さんと田中さんの二人は、佐賀県有田にある福珠窯で絵付けを担当している。磁器の伝統の地として名高い有田でも、今では絵付け専門の職人は数少ない存在となった。
蒲地さんは、姉が働いていたことをきっかけに福珠窯に入社。当時は、大量に器が売れた時代であり、絵付けも細かく分業されており、同じ作業を何度も繰り返すうちに、絵付けの技法を少しずつ覚えていったという。「絵付けは、筆の流し方が大切なんです。私はカチッとしたものよりは、シャシャッと勢いを持って描くのが好きです」と語る。田中さんは、同じく佐賀県で生まれ育ち、市役所での勤務を経て福珠窯に入社。先輩たちから学びながら、染付や上絵を順番に覚えていった。絵付けは根気がいる作業だが、お客様からの「この器が好きです」という声が、仕事のやりがいになっているという。
「素人で入社した私たちでもできた仕事ですから、どんな人でもできますよ」と話す二人の和やかな笑顔は、柔らかな絵付けを得意とする福珠窯を象徴するようかのように輝いていた。