備前焼の魅力を発信する新たな拠点「備前市美術館」がグランドオープン
工芸トピックス VOL.39

安土桃山時代、朝鮮半島から陶工を招致したことに端を発する萩焼。その後、多くの職人が三ノ瀬の地に移り住んで築窯し、萩藩の御用窯として萩焼深川窯が始まった。陶芸家、田原崇雄はその長い歴史を汲む窯元で自身の萩焼に向き合っている。
作家が現在力を入れている「流白釉」は、三ノ瀬の窯跡で見つけた古い陶片を着想源に、釉薬の調合を試す中で生まれた独自の作品。萩の大道土に藁灰釉と松灰釉を重ね掛けし、褐色から淡い緑色へと、自然かつ大胆な色調の変化を作り出している。細い筋状に縦に流れる釉薬の景色を美しく見せる凛とした形状は、萩焼の特徴の一つである切り高台が力強く支えている。
萩の昔の窯跡に今も残る陶片には、伝統的な萩焼の雰囲気と異なるものも見つかるという。時代と共に現れる新たな作風も萩焼として受け入れる、揺るぎない歴史と懐の深さがこの地にはあるのだろう。作家が生み出す新たな萩焼がこの先の歴史を作っていくに違いない。