Insightインサイト

展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。

展覧会情報

展覧会一覧へ

『ARITA×SOGETSU研究発表展』展覧会レポート

有田焼窯元と草月流華道家が協働開発した作品が並ぶ

2021年12月14日(火)〜12月18日(土)、佐賀大学の肥前セラミック研究センターが主催するイベント『ARITA×SOGETSU研究発表展』が、東京赤坂 草月会館にて開催された。本展では、草月流華道家が制作した生け花総勢13点を展覧。花入は、複数の有田焼窯元が構成する株式会社ARITA PLUSが、草月流華道家と協働で開発した作品だ。15日(水)には、李荘窯の当主でARITA PLUS代表の寺内信二さんによるギャラリートークも開催。華道家や陶磁器産業関係者など多くの人々が訪れ、熱心に耳を傾けていた。

器の制作は、寺内さんをはじめ、瑞峯窯の原田耕三郎さん、徳幸窯の徳永弘幸さん、吉右ヱ門製陶所の原田吉泰さんの4名が担当。ARITA PLUSを構成する窯元の当主たちである。器のデザインを手掛けたのは、草月流華道家の内藤華了さん、後藤麗美さん、平井夏光さん。共に打ち合わせを重ね、器のデザイン・制作を進めてきた。このような試みはARITA PLUSとしても初めてだったと語る寺内さんは、「普段食器を制作することの多い有田焼では“薄さ”を追求しがちですが、草月流の先生たちには“厚く”することを求められました。薄い花入だと、花を生けたときの安定感に欠けてしまうんですね。排泥鋳込という技法を使った作品では、厚めに成形しようとすると型がたくさん水分を吸収して重くなってしまい、扱いが大変。素地を乾燥させているうちに割れてしまうこともあったり。難しかったです」。試行錯誤の末にできあがった作品は高い完成度を誇る。有田焼の卓越した技術が多彩な表現を可能にし、花と器の見事な競演が実現した。

有田焼がこれまで主力としてきた業務用食器市場が縮小する中、新たな分野への市場開拓を目的として始まった本研究。「器との関係性が植物を生かします。今回を出発点に、陶器だけでなく磁器も、生け花の器として活用される機会が増えることを期待したいですね」と話すのは、草月流家元の勅使河原茜さん。窯元と華道家双方が新しい表現を探求し、刺激を与えあうことで見えた、陶磁器産業の未来を照らす新たな芸術の萌芽。それは、有田という産地全体にとっても、市場開拓のヒントを得る有意義なきっかけとなったのではないだろうか。

文:堤 杏子

器デザイン:内藤華了、器制作:徳永弘幸、花制作:遠藤桜泉

■ 関連情報

・『ARITA×SOGETSU研究発表展』展覧会ウェブサイト
https://as.crc.saga-u.ac.jp/

・草月流 オフィシャルウェブサイト
https://www.sogetsu.or.jp/

SHARE WITH

KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。