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西山雪 展『ふゆのしらせ』展覧会レポート

2021年11月27日(土)〜12月5日(日)、東京 六本木 サボア・ヴィーブルにて、北海道のガラス作家 西山雪さんの個展が開催された。同ギャラリーでは2016年より毎年西山さんの作品展を実施、今年で6回目の開催。新作展となる今回のテーマは『ふゆのしらせ』。晩秋から冬に移りゆく季節、北海道の植物や虫たちが織りなす情感豊かな風景を繊細に映し取った作品総勢55点を展覧した。

色彩豊かな酒器

西山さんは、宙吹きでのガラス成形からカットや絵付けまで、全ての制作工程を自ら手掛けている。今回の展覧でひときわ目を引いたのは、大きな三つ足鉢《ふゆのしらせ 野ぶどうと雪虫》。口縁は緩やかな曲線を描き、柔らかな印象を与える造形だ。「宙吹きだからこそできる動きのある形を作りたいと思い、今回初めてこの形に挑戦しました」と西山さん。透明なガラスの両面に施された野ぶどうの絵付けも鮮やかで、「今年は特に、家の周りの野ぶどうの色づきが良くて」と笑顔。さらに鉢を覗き込んでみると、野ぶどうの周りにふわふわの白い毛のついた小さな虫が描かれていることに気づく。「これは”雪虫”と言って、北海道では初雪の降る2週間ほど前から飛び始める虫です。雪虫が飛ぶと冬がすぐそこまで来ていることを感じるのですが、実際に初雪が降るころには、雪虫はぱったりといなくなってしまうんですよ」。まさに晩秋の風物詩だ。

落ち葉を描いた《秋あそぶ》シリーズも、新作の絵柄のひとつである。色とりどりに染まった落ち葉や木の実が、風に乗ってくるくると舞い、楽し気な様子。描き足しては焼き付ける過程を何度も繰り返したというこの絵柄は完成度が高く、細やかに施されたサンドブラストが効果的に立体感を演出している。定番となっている《mimosa》シリーズにも新たな工夫が見られ、ガラスの口縁部分にのみ空気の泡を含ませることで、心地よい軽やかさが表現されていた。

光の中に佇む展示作品

北海道の自然がガラスを通してきらきらと輝く、美しい光景。絶え間なく訪れる人々、帰っていく人々の綻んだ表情は、西山さんの作品の持つ魅力が会場いっぱいに広がっていたことの証だと言えるだろう。

文:堤 杏子

■ 関連情報

サボア・ヴィーブル
https://savoir-vivre.co.jp/
〒106-0032東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F
TEL: 03-3585-7365
営業時間 12:00~19:00
定休日 水曜

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KOGEI STANDARD

編集部

KOGEI STANDARDの編集部。作り手、ギャラリスト、キュレーター、産地のコーディネーターなど、日本の現代工芸に関する幅広い情報網を持ち、日々、取材・編集・情報発信を行なっている。