「クラフトマンシップ」
連載コラム『日本工芸の歩む道』後編「現代社会と工芸」 VOL.2
展覧会情報やインタビューなど、工芸に関するさまざま情報を発信しています。
徳幸窯の社長を務める弘幸さんは、1974年生まれ。大学では史学を専攻し研究者の道へ進むことも考えたが、「案外、焼き物も楽しいものだぞ」という祖父の遺言を胸に、家業を継ぐことを決意したと言う。
弟の榮二郎さんは、ロクロ師である。京都で焼き物の修行をし、有田に戻るが、当初は磁器の伝統ある地で自身をどう表現するかに悩む日々だった。頻繁に東京に出ては様々な作品に触れる中で、土ものである陶器に炭を用いて独特の風合いを出す「炭化焼成」を自身の表現とすることに決めた。今では、徳幸窯で職人として作陶を行いながら、年に一度、東京で個展を開き、個人作家としての活動も行う。そんな弟の活動を、兄の弘幸さんは「白い磁器が主体の有田で、土ものを制作する弟の個性を活かすことが、窯元としての長所にも繋がる」と評価する。
近年では、海外の展示会にも参加し、各国の料理人の依頼にも対応する。共に「器に料理が盛られて、別の作品に生まれ変わることが大きな喜び」と語る二人。有田の地から新たな風を生み出そうとしている。