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第4回「三井ゴールデン匠賞」贈賞式レポート

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伝統工芸にとって、昨今「持続と発展」は大きなキーワードとなりつつある。受け継がれてきた高い技術力はもちろんのこと、現代の生活に合うスタイルを模索し、斬新なアイデアを形にしたり、SNSを活用した取り組みを行なうなど、次世代へとつながる発展を目指してさまざまなことに挑戦する作り手が現れ始めたことは、特に注目すべきことだろう。一方で、その価値を広く伝えていくにはまだまだ努力が必要な状況だ。海外からの関心も高まる中、現代だからこそ再認識できる伝統工芸の価値というものをいかに発信し、情報を広く伝えていくか。これが喫緊の課題である。

〈三井ゴールデン匠賞〉
佐々木正博 《乾漆蒟醤草花文八角蓋物》
蒟醤(きんま)の技法をベースに独自開発したグラデーション表現と繊細な文様が融合した、華やかな一品

そんな中、こうした日本の伝統工芸の持続・発展に真摯に取り組む作り手に称賛が集まる機会を作り、伝統を次世代につなぐ取り組みを応援する目的で創設されたのが、「三井ゴールデン匠賞」である。2015年以降隔年で実施され、2022年2月9日に第4回目となる同賞の受賞者が発表された。贈賞式は3月18日(金)に東京・大手町三井ホールにて開催され、各受賞者への表彰と花束の贈呈が行なわれた。

前列左から:佐々木正博、株式会社松崎人形代表・松崎光正、松山好成、宮本雅夫
後列左から:築城則子、林美光、クリエイティブ・シェルパ代表・羽塚順子・藤田昂平、松本光太
※オンライン参加:烏城紬保存会代表・須本雅子
(敬称略)

今年度の〈三井ゴールデン匠賞〉受賞者は、烏城紬保存会(岡山県/烏城紬)、佐々木正博さん(香川県/漆芸)、株式会社松崎人形(東京都/江戸木目込人形)、松山好成さん(三重県/伊賀くみひも)、宮本雅夫さん(石川県/九谷焼)の5組。さらに、〈審査員特別賞〉に築城則子さん(福岡県/小倉織)、林美光さん(秋田県/金銀銅杢目金)の2組が、〈奨励賞〉にクリエイティブ・シェルパ(東京都/江戸仕立て都うちわ千鳥型)、松本光太さん(香川県/香川漆器)の2組がそれぞれ選出されている。贈賞式では、事前にウェブサイトで一般投票を実施した〈モストポピュラー賞〉も発表され、今回最も得票が多かった石川県の九谷焼職人である宮本雅夫さんが受賞した。

「石粉塗」を開発した松本光太さんは、その視点のおもしろさ、ユニークさが高く評価され〈奨励賞〉を受賞した。本来なら産業廃棄物となる「庵治石(あじいし)の削り石粉」に漆を混ぜ込んだもので器を塗ることで、強度が高く指紋が気にならない漆器を創り出した。食育の一環としてこうした漆器を小学校に無償提供し、次世代の使い手を育てる活動も行なう。シンプルなデザインは和洋の垣根を超え、US花王ボトルに漆器のデザインが採用されるなど、商品開発および国内外への啓発に関する複合的な活動が大きく評価された。松本さんは、「現状まだまだ知名度が低いので、地域を元気にするためにも、海外の方々にもっと知っていただきたいです」と今後の活動への意欲を示した。審査員の河井隆徳さんは、「伝統工芸が次世代にも愛されていくための取り組みを実践されていて、その輪を広げる活動が高く評価されました」と賛辞の言葉を贈った。

〈奨励賞〉
松本光太 《Zoukoku茶箱「満月」》
石粉塗による凹凸表現が独創的な茶箱

〈審査員特別賞〉
築城則子 《縞縞EVOL「自在無彩」》
機械に「手」の技を同化させ、自由なピッチのデザインが実現した

〈審査員特別賞〉を受賞した築城則子さんがアートディレクターおよびデザイナーを務めるブランド「小倉 縞縞」は、福岡県小倉の伝統織物である小倉織を、ファッションやインテリアなどさまざまな方面に展開することで縞の新たな可能性を創出してきた。審査員長の外舘和子さんは、「小倉織は、繊細な縞模様と堅牢さが特徴の織物。築城さんは、小倉織の機械での生産を可能にし、世の中に広く普及させる取り組みを行なっています。今後、より一層のポピュラリティを獲得していっていただきたい」と期待する。築城さんは「今回“未来につながる取り組み”と評価していただけたこと、大変嬉しく思います。小倉織は、先人たちが守ってくれた風土と気質が相混ざったもの。それを守り、育て、進化を目指しながら、伝統工芸の発展に貢献できるよう、真摯に取り組んでいきたい」と受賞の喜びを語った。

〈三井ゴールデン匠賞〉を受賞した各組の中から、一般投票で〈モストポピュラー賞〉に輝いたのが、石川県の宮本雅夫さんだ。レベルの高い作品が多い九谷焼のなかでも、宮本さんが独自開発した絵の具の存在感や、その表現力が注目を集めた。この絵の具は剥離しにくく透明度が高いことが特徴で、鮮やかで温かみがあり、立体感ある独特の表情に焼き上がる。宮本さんは今回の受賞にあたり、「作家と職人の垣根を超え、ひとつのチームとして、九谷焼を世界に発信していきたい。審査員の方々が私のこうした意図を深く汲み取ってくださったこと、また、地道な活動に光を当てていただいたことに深く感謝しています」と話し、〈モストポピュラー賞〉の受賞が発表された瞬間は、大変驚いた様子で「これをきっかけに今後も精進したいと思います」と語った。審査員の福島武山さんは、「自分も九谷焼の作家ですが、同じ産地の一員として、これからも九谷焼を盛り上げていっていただきたい」と激励した。

〈三井ゴールデン匠賞〉〈モストポピュラー賞〉
宮本雅夫 《緑彩花鳥文香炉》《煌五彩瑞鳥文香炉》
立体感溢れる絵付けが美しい

今回の審査では、技術・技能の素晴らしさはもちろん、創造性や持続性、またそれらの観点から「未来につながる取り組み」が評価された。本稿では詳しく紹介できなかった他の受賞者も、独自の技法の開発や障害者雇用の創出など、伝統を継承しながら将来を見据えたさまざまなことに挑戦している。これらの未来へつながる取り組みが、今回の受賞を機に世界の注目を集め、日本の伝統工芸市場がより活性化し、さらなる発展を遂げることに期待したい。

文:堤 杏子

■ 第4回「三井ゴールデン匠賞」概要
オフィシャルサイト:https://mgt.mitsuipr.com/
第4回「三井ゴールデン匠賞」受賞者一覧ページ https://mgt.mitsuipr.com/about/winner.html
主催:三井広報委員会
後援:経済産業省、一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会
賞の種類:〈三井ゴールデン匠賞〉〈モストポピュラー賞〉〈審査員特別賞〉〈奨励賞〉
審査員:
・外舘 和子(工芸評論家 多摩美術大学教授)*審査員長
・清水 眞澄(三井記念美術館館長 成城大学名誉教授)
・河井 隆徳(一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会 産地支援部 部長)
・千 宗屋(武者小路千家家元後嗣)
・福島 武山(日本工芸会 正会員 伝統工芸士 九谷焼赤絵細描作家)
※敬称略

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