越前鯖江のオープンファクトリーイベント『RENEW/2026』開催情報
注目の展覧会・イベント VOL.99

しっかりと焼けた土の緋色に、自在に飛び回るように掛かる艶やかなビードロ釉の緑、口部は濃灰色や褐色と、とりどりの景色が詰まった見どころの多い本作《伊賀耳付花入》は、奈良県で作陶に勤しむ辻󠄀村塊氏の作品。全体にあしらわれるくっきりとした幾重もの筋や豪胆に入るヘラ目のほか、柑子口からきゅっと窄まる首元には、しばしば伊賀焼の特徴として目される一対の小さな「耳」と呼ばれる把手が付いている。伊賀焼らしい装飾性と力強さを、独自の感性でもって美しく調和した佇まいに収れんさせる手腕は見事というほかない。
さまざまな種類のやきものに挑戦し、多彩な作品を世に送り出している辻󠄀村氏が、日々やきものと向き合う中で培われた確かな技。本作を見ていると、土を成形し焼成するというシンプルな創作にこそ発露する、まっさらで鮮烈な表現力に感嘆せずにはいられないのである。